水産試験場

図5 カレニア・ミキモトイ赤潮により鰓を大きく開けて死亡した魚

カレニア・ミキモトイの特徴について

<宮崎県赤潮発生対応マニュアルにおける注意・警戒基準>
○注意レベル:100細胞/mL(アワビ類に対して10細胞/mL)
○警戒レベル:1,000細胞/mL(アワビ類に対して100細胞/mL)
 カレニア・ミキモトイは例年瀬戸内海や九州海域などの西日本を中心に赤潮を形成しており、平成29年度は伊万里湾で大規模な漁業被害をもたらしました。近年では東京湾や函館湾などの東日本でも赤潮形成の報告があり、全国的に監視と警戒を行う必要のある種の1つとされています。
カレニア・ミキモトイはシストと呼ばれる休眠細胞を作らないことに加え、強い光に弱く、基本的に弱めの光が差し込むような水深を漂っているために赤潮化しても気づかれにくいという特徴があります。また、普段は珪藻類(赤潮原因プランクトンと栄養塩を取り合う競合関係にある植物プランクトン)が優勢なのですが、低日照の状況が長く続くと、本種の方がより増殖に有利となり、赤潮化しやすくなりますので梅雨時期や曇天が続くような日には特に注意が必要です。
赤潮プランクトンの多くは環境条件が悪くなるとシェルターの様なシスト(休眠細胞)を作って悪条件下をしのごうとします。しかし、カレニア・ミキモトイは条件の悪い冬季でもシストを作らず、越冬することが知られており、本県の調査でも冬季に北浦湾、浦尻湾で存在が確認されています。そして、この越冬するプランクトンの数が次の水温上昇期の増殖に影響する可能性があると言われています。
また、本県で過去カレニア・ミキモトイ赤潮が発生した年には、同時期あるいは発生前の時期に豊後水道海域で赤潮の形成がみられたことから、本県のカレニア・ミキモトイ赤潮の監視・予察には隣接海域の発生状況を把握しておくことが有効であると考えられますので、普段から地先沿岸のみでなく、まわりの海域の情報も積極的に入手しておくことが重要です
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