水産試験場
図4.耳石(目の後方の頭骨中に1対)
図5.耳石横断面と年輪
図6.耳石表面と年輪
図7.児湯地区雌雄別カサゴの年齢と平均的全長の関係
(※9才以上は9才と併せて表現)

年齢査定方法

に、漁獲されたカサゴは一体何才が何尾いるのかを推定することになりますが、前出の市場調査では、大きさや雌雄のみしか情報が得られません。
 雌雄、大きさから年齢を推定するために、事前に、雄雌それぞれの年齢と大きさ(成長)の関係を掴んでおかなければなりません。
 個々の魚の年齢を求めるわけですが、年齢を見分ける方法として、魚種により鱗、骨、耳石(扁平石)の日輪や年輪の輪紋の数を用いる方法が知られています。
 水試では現在、カサゴの頭骨の中の耳石(図4)という骨の輪紋(年輪)の数から判定しています。取り出した耳石を、中心を含む短軸方向に正確に割断し、薄い切片として、その断面を顕微鏡で観察して輪紋数を求める横断面法と、耳石をそのままキシレンという有機溶媒に浸漬した状態を直接顕微鏡で観察して輪紋数を求める表面法があります。
 横断面法(図5)は手間がかかりますが、より正確に輪紋を観察できるといわれています。一方、表面法(図6)は迅速に査定できますが、高齢魚の輪紋は観察しにくくなるといわれています。
 現在は、データの迅速な蓄積を目的に表面法を採用して年齢査定を行っています。
 輪紋(不透明な年輪)は1年に1本、おおむね雄は春先から夏、雌は初夏から秋にかけて形成されますので、いつ漁獲された雄か雌かにより、1月1日生まれと仮定して輪紋の本数を基に推定します。ちなみに、図6は、雄の6月の耳石で輪紋が4本で4才と判定しています。
 このようにして、調査の主要地区となっている児湯地区で入手できたカサゴ約2800尾のデータから表した年齢と平均的全長の関係(グラフと式)が図7です。
 平成18年までのデータから求めた関係式から2才の6月時点での平均的全長で雄が185mm、雌が154mmと推定され、雌に比べ雄の成長がよいということがわかります。

市場調査で調べたカサゴの大きさから集団の年齢構成を推定する方法の検討

は言いましても、カサゴの場合、大きさは年齢ごとのばらつきが大きく、全体としては確かに年齢を重ねるほど大きくはなっていきますが、個体ごとに見れば、年齢差があっても大きさがほとんど変わらないとか、逆というものもいて個別の大きさから見た年齢査定(年級の決定)を困難にしています。調査魚をすべて購入してすべての耳石を見ればよいでしょうが、現実には不可能です(予算も手かずも足りません)。
 そこで、全体の中の一部を物差しとして扱えるように、年齢と全長等との関係データの蓄積を図っているところです。年齢と全長等との関係データから、ある大きさのカサゴがいた場合、その大きさのカサゴとして調査集団の中に何才の魚がどれだけの比率でいるのかを仮定し、実際の調査集団全体にそれぞれの大きさを基に各年齢の魚の比率を割り振り、集団内の各年齢の尾数を推定するという方法を検討しているところです。
 使用可能であれば、各年に放流し、後ほど再捕された標識カサゴの数を同時に漁獲された同一年齢のカサゴの数の中でそれは何%であるのか推定することが可能となり、それを調査地区全体の漁獲に拡げて算定し、放流後の数年間にわたり、放流カサゴの回収(放流効果)を推定することができるようになります。
 いろいろな条件があり、課題も多く、書いたようには行かないでしょうが、他に実施している標識放流カサゴの追跡調査も含め、今後もカサゴの放流技術開発研究を推進していくこととしております。
 特に、児湯郡、宮崎市におきまして、片側の腹鰭を切除した標識放流を行っております。
 主たる児湯の調査では、放流地点付近での標識放流魚の再捕が多く、放流地点付近に定着しやすい魚種と思われますが、放流後2年程度で半径5km程度の調査地先海域へ徐々に拡がりもみられています。また、少数ですが約20kmの遠距離移動も確認されています。
 標識放流魚の再捕データは、移動や放流効果などを推定する上で貴重なものですので、もし、漁獲されたカサゴの中に、片方の腹鰭が無いものやイビツなもの(不完全再生)を発見されましたら、水試や最寄の農林振興局、財団法人宮崎県水産振興協会、漁協へご連絡をお願いします。
4月の動き(県関係)
1日 漁業士会総会・認証授与式(宮崎市)
4日 平成19年度九州各県水産主務課長協議会(佐賀市)
5日 海区漁業調整委員会事務局長会議(東京都)
22日 宮崎市水産振興開発協議会(宮崎市)
25日 宮崎県農政水産部技術調整会議幹事会(宮崎市)
FISHERIES EXPERIMENT