水産試験場
マアジ畜養・出荷マニュアルの作成
はじめに
産物の有効活用のため、大学で老人性疾患や生活習慣病に有効な機能性成分の探索を行った結果、「カルノシン」という成分に脳血管性認知症予防、不眠症改善、疼痛緩和、抗ストレス等の機能を持つことが発見されました。カルノシンは、以前から疲労回復効果が知られており、最近ではサプリメント等で見られるようになった成分です。そこで、海洋性資源の中でも未利用のものや低利用のものに関して、カルノシン含有量調査を行い、これら資源を有効活用できないかと考え、調査を行いましたので、その結果を紹介します。また、併せて、いきいき宮崎のさかなブランド確立推進協議会が選定している宮崎のさかな15魚種について、水産物の魚肉特性を把握し、売り込みの際のPRの一助を目的として、一般成分、遊離アミノ酸分析を行いました。さらに、これらの事業で見いだされた機能性成分を多く含む水産物について、加工品試作も行いました。
カルノシンについて
カルノシンとは、β-アラニンとヒスチジンというアミノ酸が2つ繋がっているジペプチドで、他にも似た性質をもつアンセリン、バレニン等をまとめてイミダゾール化合物と呼んでいます。

カルノシン含有量分析結果 50サンプルを分析した結果、頭・内臓の廃棄部分でカルノシンを含んでいたのは、カンパチ、アユ、チョウザメ皮の3サンプルで、筋肉等の可食部分では、マアナゴの1サンプルでした。
次に、宮崎のさかなに選定されている15魚種の筋肉部分のカルノシン関連化合物含有量を調査しました(表2)。

深海底曳網漁業で漁獲される未利用資源(商品価値がなく、廃棄されるもの)や、県内で発生する加工残渣等のカルノシン含有量調査を行いました(表1)。


表1 県産水産資源のカルノシン含有量調査結果
(mg/魚肉100g)

表2 宮崎のさかなカルノシン関連化合物の分析結果
(mg/魚肉100g)
その結果、カツオ、キハダ、マアジ、ウナギにカルノシンが含まれていました。特にウナギに多く含まれており、これはウナギを売り込む際のセールスポイントになると思います。 カルノシンを多く含むウナギですが、もっとカルノシンを多く含む魚があります。それがチョウザメです(図1)。本県が開発した増強飼料を用いて養殖されたシロチョウザメの魚肉には100g当たり1000mgを超えるカルノシンが含まれています。チョウザメというとキャビアが有名ですが、その魚肉も十分利用価値があり、現在、県を挙げてチョウザメ養殖とその振興に力を注いでいるところです。
図1 畜肉類とチョウザメ等のカルノシン含量の比較
FISHERIES EXPERIMENT